特許の攻撃と防御、そして交渉

特許の攻撃防御、そして交渉

自社で持てば武器になるが他社から攻撃されることもある。白黒つけるより、どこかで折り合う。手札を見極めて、交渉に臨む。

交渉のテーブル

「交渉のテーブルにつく」とは、相対する両者の間で交渉が始まることを意味しますが、今回は、比喩的な意味ではなくて、文字通り、相対交渉の場での物理的なテーブル(机)などの配置の話です。

応接室より会議室

特許関係の交渉では、手元に用意する資料が多くあります。メモもしっかり取りたい。互いにプロジェクタを使って説明をすることもあります。その場に持ち込んだ資料だけでは足らなくて、パソコンやその向こうにある社内のファイルサーバにアクセスすることもあります。今後の日程を決めるために、社内のスケジュール管理システムや会議室予約システムにアクセスもできた方がよいでしょう。

これらを考えると、ローテーブルにソファという応接室は特許の交渉には不向きで、書き物ができ、PCが操作できる机が置かれた会議室が適切でしょう。訪問先で通された先が応接室だったり、会議室の空きの関係でこちらも応接室を使わざるを得なかった経験が何度かありますが、やりにくくて苦労しました。応接室は、特にメモも資料も要らない、親交を深める会話や挨拶では問題ありませんが(といっても、深く腰掛けるタイプのソファは小柄な女性には向きませんが)、その他の用途には不向きですね。

離れた会議机・大きなテーブル

プロジェクタが常設されているタイプの会議室では、会議机をロの字形に配置し、上辺にプロジェクタが置かれていることが多いようです。訪問される側がプロジェクタ利用を希望されることが多いので、こうしたタイプの会議室を用意する頻度が高いのではと思います。ロの字の左右に向かい合って両者が座ることになりますので、一定の距離があります。

法律事務所などの会議室には、大きな楕円形・長方形の天板のあるテーブルが用意されているのがよく見られます。向かい合わせに座ったときに、ロの字形配置の会議室と似たような距離感になることが多いと思います。

いずれも、大声を張り上げる必要まではないけれども、手元の資料やメモ書きが向かい側からは見えない程度の距離が確保されます。声を潜めれば、向かい側に聞こえないように内輪の話をすることもある程度可能です。

小テーブルの小会議室

上記したロの字配置の会議室は、比較的収容人数が多い(10人以上)、中会議室以上の場合が多いようです。6人〜8人定員の小会議室には、スペースの関係か、テーブルも小さいものが置かれています。小さいテーブルでは、向かい合わせに座っても、相手との距離が近く、資料を置くと向かいに座った人の資料とぶつかりそうになったりします。隣との距離も余裕がなく、広くスペースを使うには適していません。

こうした会議室でのミーティングは、相手との距離が近いため、議論が活発になります。社内や提携先との間で意見を交換する場合には効果が高いでしょう。

しかし、攻撃側・防御側に立って交渉している場合には、距離が近すぎてやりにくく感じます。メモの内容が相手から見えそうで気を使いますし、相手に見せたくない資料を広げて置いておくのもヒヤヒヤします。隣席の同僚と内緒話をしようにも、声を潜めても聞こえてしまいますから、ノートか画面を使って筆談になります。相手の顔がすぐそこにあると、厳しい発言をするのに躊躇いが生じることもあります。

このように、心理的距離が交渉内容に直接影響する可能性もありますし、なにより交渉内容以外のことに気を使うのは認知資源の無駄遣いです。もとより集中力を要する(=疲れる)交渉なのですから、目的外に認知資源を使わずにあまりおきましょう。小さな会議室の小さなテーブルを囲んで厳しい交渉をするのは避けたほうが賢明です。

このような場合を考慮しているのか、法律事務所では、小会議室でも大きめのテーブルが設置されていることが多いように思います。企業の場合、交渉に使うより距離感近い相手との打ち合わせに使うことの方が多いでしょうし、なによりスペースはコストに直結しますから、小さな会議室には収容人数がギリギリ座れる程度のテーブルにしておくことが多いように思います。

交渉に適したテーブルを面談場所に設定する

ということで、自社に交渉相手を迎えて面談交渉する場合には、総人数が少ないとしても、交渉に快適なテーブルの大きさを確保することを優先して、大きめの会議室を押さえたほうがよさそうです。

逆に、交渉が妥結して両者握手という段階では、心的距離を縮める効果を狙って小さめの会議室を使ってもよいかもしれません。