面談交渉のバリエーションとして、電話会議で交渉を行うことがあります。遠方の相手方、特に海外の相手方からは、メールのやり取りに加えて電話会議で説明します、と申し出られることが多いように思います。TV会議もオプションになりますが、これは設備面で自社が対応できるかどうかに左右されます。電話会議なら、電話会議システムがなくても、電話機だけでなんとかなります。
電話会議のメリット
文字でのやり取り(手紙やメール)と比べてのメリット、直接面談交渉することに比べてのメリットがあります。
電話会議は、面談には及ばないものの、文字だけでのやり取りよりは、ニュアンスが伝わりやすく、口頭であることから、背景事情やあまり文字には残したくないような付属情報なども得られることが多くあります。メールを重ねて意図がうまく伝わらず、隔靴掻痒感が積み上げられてきたケースが電話会議で一気に進捗するということもよくあります。
電話会議の場合は、面談と異なり、自社で行うことができます。移動時間が不要ですし、面談に比べてスケジュールを合わせやすい。相手が海外の場合には、時差を考慮する必要がありますが、電話会議であれば、退社後に自宅から参加することも選択肢に入れることができそうです。
多拠点間の電話会議システムを使えば、普段複数拠点で仕事をしている相手とも一度に会議を行うことができます。海外相手だとこのパターンは多く、参加者が個別に会議システムにログインしてくることも多いように思います。自席から音声通話が可能な環境であることも大きいのかもしれません。
逆に、会議室に集合して電話会議をしている場合には、相手に聞かせたくない打ち合わせをする場合にミュート機能を使うことができます。面談の場合にこれをやろうと思うと場所を別に用意してもらったり、相手に会議室を出て行ってもらったりする必要がありますが、電話の場合は簡単に実現できます。これをやりたいために、自社側は拠点が離れていても同じ場所に集合して臨むという手法もあると思います。
電話会議のデメリット
面談と異なり、相手の表情やボディランゲージを読み取ることはできません。相手の反応を見たいときには面談の方が優れています。
TV会議よりは少ないですが、繋がらない、ハウリングする、などのシステムトラブルの可能性があります。システムがうまく動くのが大前提なので、うまく動かないとダメージが大きくなります。機器の準備は入念に、重要な局面では練習しても良いかもしれません。
交渉で用いる資料については、面談に比べて工夫が要ります。事前に当日の議題と資料を送付しておくのが前提です。可能であれば、画面共有を使うのが有効です。画面共有のシステムが電話会議のシステムに付属している場合もあります。但し、画面共有は、特に初めて使う場合にはシステムトラブルの可能性を見込んでおいたほうが良いでしょう。うまく動かないときのために、バックアップで資料は送っておくのが必須です。
ホワイトボードにその場で書いて理解を深める、というのも画面共有でなんとか代替できるかもしれませんが、全く同じとはいかないでしょう。
海外の相手と電話会議で英語でその場で交渉するのは、面談よりもさらにハードルが上がります。アジェンダを事前に送付しておく、話の流れを想定して聞き取りをスムーズに、聞き取れなかったら何度でも聞き返す、自分の発言も繰り返す、といった工夫が必要です。
どんな局面が電話会議に向いているか
上記のメリット・デメリットを考えると、電話会議で一番やりやすく、効果があるのは、(補足)説明だろうと思います。すでに資料が渡されており、一通りの説明はそこに書かれているけれど、周辺情報や背景事情を補って理解を深めてもらう類の説明です。技術説明であっても、説明に使う資料が十分用意されていれば、電話会議で問題なく行うことができます。
一方、条件の提案など、センシティブな局面では、できれば面談で行いたいところです。初めての条件提示、思い切った条件の変更などの場合は、その場で相手の反応を見たいと思います。一方、条件交渉が進んできて、既に何度も行っているのであれば、互いに相手の反応が想像できるようになってきますので、電話会議で問題ありません。
海外の相手で、面談が難しい場合には、条件提示であってもメールで先出しして補足説明を電話で行う、電話で条件を話してその場で補足し、あとから文書を送ることがあります。メールだけで行うよりも印象を和らげる効果はありますし、補足説明で納得性を上げることもできますので、活用するとよいでしょう。
画面共有と電話会議の組み合わせは、その場で確認も取りやすく、質疑応答もやりやすいため、効率よく進めることができる会議形態だと思います。普及が進むと互いに慣れてきてトラブルも減るでしょうから、うまく利用していきたいですね。