特許の攻撃と防御、そして交渉

特許の攻撃防御、そして交渉

自社で持てば武器になるが他社から攻撃されることもある。白黒つけるより、どこかで折り合う。手札を見極めて、交渉に臨む。

隣人を知る|「企業法務入門テキスト―ありのままの法務」

知財渉外の仕事は、訴訟で協働したり、契約書を検討してもらったりなど、法務部門との距離が近いです。組織として同じ(本)部の中に置かれていることも多くあります。 また、事業部門で進めていることは法務部門には相談や契約検討依頼などでインプットがあ…

最近の米国PAE系訴訟の傾向(3) 膨大な訴訟コスト

BLJの連載第4回(2015年3月号)は、「膨大な訴訟コスト」でした。 BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年 3月号 [雑誌]出版社/メーカー: レクシスネクシス・ジャパン発売日: 2015/01/21メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る ところで…

発明の本質から事件の見立てをする

昨秋出版されて気になりつつなかなか書店に行けなくて購入が今になってしまったのですが、「訴訟の技能」を読みました。 訴訟の技能――会社訴訟・知財訴訟の現場から作者: 門口正人,末吉亙,中村直人,佐藤久文出版社/メーカー: 商事法務発売日: 2015/10/03メデ…

BLJ「ライセンス契約法」連載への期待と要望

前回記事の通り、大変高評価している本連載ですが、せっかくですから私自身の問題意識の一端の覚えを兼ねて、今後への期待と要望を書いておきたいと思います。 mainstage.senri4000.com 見通しが知りたい まずは、この連載がどこまで何をカバーされる予定な…

知財部門の定期購読雑誌

昨年末にはっしーさんの「法務部のための定期購読誌&データベースガイド」エントリを拝見して、そういえば、定期購読している雑誌についてまとめてエントリしたことってなかったかも?と思いましたので、一度まとめておこうと思います。データベースについ…

「ライセンス契約法」 松田俊治|BLJ連載

BLJ(Business Law Journal)の2015年3月号から松田俊治弁護士による「ライセンス契約法」の連載がされています。2016年2月号で12回まで継続され、次回4月号からは隔月連載になるそうです。この機会に過去記事を全部まとめて読んでみました。 サブタイトルが「…

標準必須特許の権利行使を巡る法的問題|鈴木將文 (名古屋大)

経済産業研究所の2015年ディスカッションペーパーとして、鈴木將文先生(名古屋大学)の論文が発表されています。個人的に関心の高いテーマであるため、アウトライナーにコピーして真剣に読みました。ご紹介するとともに、思ったことを書き付けておこうと思…

最近の米国PAE系訴訟の傾向(2) 高い賠償及び差止リスク

BLJ 連載の第3回(2015年1月号)は、「高い賠償および差止めリスク」でした。 BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: レクシスネクシス発売日: 2014/12/20メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る …

相手の立場で考える

思考の癖 訴訟の提起や警告状の送付などで権利行使を受けた場合、つい、自社のポジションを固めようと躍起になってしまいます。自社製品が権利範囲に含まれるかどうか(属否)を考えるときにも、自然に違いを探しますし、特許請求の範囲の文言も狭く解釈して…

最近の米国PAE系訴訟の傾向(1) 陪審裁判と裁判地選択の影響

BLJ 連載の第2回(2015年1月号)は、「陪審裁判と陪審および裁判地選択が結果に与える影響」でした。 BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: レクシスネクシス発売日: 2014/11/21メディア: 雑誌この商品を含…

最近の米国PAE系訴訟の傾向

2012年以降、PAE訴訟の傾向には変化が感じられる。変化の主な原因は、2011年の米国特許法改正と、最高裁による特許判決の増加に違いないが、これらがどのように影響した結果、変化がもたらされているのかについて、全体を整理した論考を読む機会はあまりなか…

電話会議での交渉

面談交渉のバリエーションとして、電話会議で交渉を行うことがあります。遠方の相手方、特に海外の相手方からは、メールのやり取りに加えて電話会議で説明します、と申し出られることが多いように思います。TV会議もオプションになりますが、これは設備面で…

交渉のテーブル

「交渉のテーブルにつく」とは、相対する両者の間で交渉が始まることを意味しますが、今回は、比喩的な意味ではなくて、文字通り、相対交渉の場での物理的なテーブル(机)などの配置の話です。 応接室より会議室 特許関係の交渉では、手元に用意する資料が多…

強弱感をスコアリングする

特許侵害訴訟・警告を受けた場合、初動段階でだいたいの類型化を行い、どんな「スジ」のケースなのかの見通しを立てます。 スジをつかむ - 特許の攻撃防御、そして交渉mainstage.senri4000.com すると、これはどのくらいの勝率なのか?と聞かれることがあり…

技術思想としての発明を捉える

発明の文脈 特許は、明細書・図面と特許請求の範囲(クレーム)から成っています。明細書とクレームは、言葉で表現されています。 特許の対象は発明です。発明は、特許法に定義されている通り、技術思想です(特許法2条)。 この法律で「発明」とは、自然法…

スジをつかむ

事件のスジを類型とパラメータで考える 特許侵害事件(Patent Infringement Case)は、傾向として、3つに類型化できます。(1)言いがかりに近いもの(Nuisance)、(2)それなりにまともなもの(Credible)、(3)ガチでヤバいもの(Sophisticated)。 もちろん、境界…

供給元にどうやって要求するか|Indemnificationの実際

前回のエントリでは、供給品に起因して特許侵害を主張された場合に、供給元に対して、何を根拠にしてどこまで要求できるのかについて、できるだけ全体像が見えるように説明しました。 今回は、実際に特許侵害を主張されたときに、どのように供給元に対して補…

供給元にどこまで要求できるか|Indemnificationの基本

※本エントリは、法務系Advent Calendar 2014への参加エントリです。 法務系 Advent Calendar 2014 - Adventar 現代の電気製品は、多くの部品からできています。最終製品を販売しているメーカーが全ての構成部品を作っているなどということはなく、部品メーカ…

オファーレター(警告状)への対応|そもそも回答するのか

回答は必須?? ライセンスオファーのレターに引き続き面談による相対交渉に進む場合について、また、レターへの書面回答の際の心得についてエントリを書きました。 相対交渉の始まりとその準備 - 特許の攻撃防御、そして交渉 相対交渉|第1回面談の調整 - …

オファーレター(警告状)に書面で回答する

相対交渉と書面交渉 ライセンスオファーのレターに引き続いて、面談による相対交渉に進む場合について、いくつかエントリを書きました。 相対交渉の始まりとその準備 - 特許の攻撃防御、そして交渉 相対交渉|第1回面談の調整 - 特許の攻撃防御、そして交渉…

相対交渉|第1回面談:説明と質疑応答

面談交渉のメンバー 特許のライセンス活動を行う事業会社では、通常、ライセンスの担当者と技術の担当者が別であることが多いようです。会社によって呼び名は色々で、ライセンスと特許技術だったり、知財法務と知財技術だったりします。 技術側の担当は、分…

相対交渉|第1回面談の調整

担当窓口の設定 事業会社からのオファーレターは、特許権者の知財部門の長の名前で発信されることが多いですが、末尾に担当者の名前と連絡先(電話とメールアドレス)が書かれていることが通常です。 レターの宛先は、社長であったり、知的財産部長だったりし…

相対交渉の始まりとその準備

ライセンスオファーのレター 他社から特許侵害を主張される場合、いきなり訴訟になることも(特にアメリカでは)ありますが、事前にレターが来ることの方が多いです。このレターは、代理人弁護士の名前で来ることもあれば、特許の所有者(特許権者)から直接…

Registered Agent

知財職が、「Registered Agent」あるいは「エージェント」という語に遭遇するのは、ほとんどの場合、訴状が米国の子会社・関連会社に送達されたとき、だと思います。 日本の裁判所は、訴訟が提起されたときには、被告の住所に訴状を送達してくれます。米国で…

特許侵害で争いになるポイントは3つ

ポジションとインパクト 訴訟になる、ならないに関わらず、特許侵害で争いになるのは3つです。 被疑製品が、対象特許の権利範囲に入っているのか 対象特許は、有効なのか 損害賠償額はいくらなのか 1と2を自社の強さを表す「ポジション判断」、3を自社の事…

米国での特許訴訟の始まり

米国子会社が特許訴訟で訴えられた。 初めてこんな連絡をもらったとき、「とりあえず、何をしたらいいの?」というのが私の思ったことでした。当時、勤務先は既に他にも継続中の訴訟を抱えていましたが、私にとって、その訴訟が訴訟提起からの初体験だったの…

Patent Troll, NPE, PAE

アメリカ特有のパテント・トロール等 アメリカでは、世にある商品に使われていそうな特許を買って来て、その商品の製造元に「特許侵害だ」として訴える、ということが頻繁に行われています。こうした振る舞いをする人たちは、パテント・トロールとか、NPEと…

プロフィール

プロフィール概略 ■中の人:せんり(@senri4000)■住まい:某地方都市■これまでに住んだところ:東京、モントリオール(近郊)■趣味:アマチュアオーケストラでビオラを弾く■家族:既婚、息子二人持ちのワーキングマザー■仕事:メーカーの法務/知財部門で管…