特許の攻撃と防御、そして交渉

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特許の攻撃防御、そして交渉

自社で持てば武器になるが他社から攻撃されることもある。白黒つけるより、どこかで折り合う。手札を見極めて、交渉に臨む。

隣人を知る|「企業法務入門テキスト―ありのままの法務」

知財渉外の仕事は、訴訟で協働したり、契約書を検討してもらったりなど、法務部門との距離が近いです。組織として同じ(本)部の中に置かれていることも多くあります。

また、事業部門で進めていることは法務部門には相談や契約検討依頼などでインプットがあり、知財部門には発明相談などでインプットがありますので、背景事情や事業部門の動向について定期的に情報交換をしておくと会社にとって最適な解を出しやすくなります。

とはいえ、お互いに業務が重なりあっている部分はそれほど大きいわけではありませんから、隣にいたとしても何をやっているのかは見えにくいものです。

そうした中、経営法友会から下記の書籍が刊行されました。

企業法務入門テキスト――ありのままの法務

企業法務入門テキスト――ありのままの法務

「はじめに」によれば、「はじめて現場に配属された法務担当者が、実際に担当する仕事のイメージをつかむことができるような書籍」を目指して、経営法友会において「企業法務の担当者がリアルに感じることのできる実務書を刊行しよう」との企画から執筆されたとのこと。

本書は、「法友電気」という架空のメーカーに在籍する3人の主要登場人物(配属されたばかりの入社2年目社員の濱田、インハウス弁護士の仲真、法務一筋の佐々木課長)が法的な実務課題に直面し、奮闘するストーリーを軸に、解説やコラムで構成されています。

分かりやすさを狙ってストーリー仕立てにするのは最近よく採用される手法ですが、本書は解説パートに頼ることなくストーリーだけで大体の法務の仕事がイメージできるようになっており、とても分かりやすいものに仕上がっています。

カバーされている分野も多岐にわたっており、その分1つ1つは短いため、相当割り切りもされていると思うのですが、その甲斐あって業務の全体感を伝えるのに成功していると思います。電気メーカーでのストーリーであり、業種が違えば異なるところも多々あるでしょうし、各社で法務がどこまで管掌しているかは様々ですから、該当しない会社もあるでしょうが、法務の仕事を伝えるのに最適な1冊といえるのではないでしょうか。

知財担当にとっては、隣の法務担当がどんな仕事をしているのかをざっと掴み、彼らの仕事観を垣間見る。そんな用途に使えそうな1冊です。

同じような用途に使える知財版はないかしら、と考えてみたのですが、狙いが共通しているのは、こちらの書籍でしょうか。こちらもストーリー仕立てになっています。1冊を通して題材が共通しているので、イメージはしやすくなっています。

事業をサポートする 知的財産実務マニュアル

事業をサポートする 知的財産実務マニュアル

ただ、残念なことに、「実務マニュアル」という本書の位置づけのため、ストーリーはいわば材料を提供しているだけで、解説のパートのアクセントに過ぎません。解説部分は膨大で、相当量を読んでいかないといけないため、ざっくり知財の仕事のイメージをつかむにはオーバースペックです。その分、実務のリファレンスとしては使えるだけの内容があります。

他に、発明協会の月刊誌「発明」で「知財部さんいらっしゃ~い。」という長期連載があります(書籍にはなっていないようです)。こちらは「企業知財担当者のためのコミュニケーション術」と銘打たれています。連載ですし、ストーリー仕立てというわけでもありませんが、実務でいかにもありそうなシーンが「今月の迷える知財部さん」として登場します。「ありのままの法務」に通じるところがある気がします。

最近の米国PAE系訴訟の傾向(3) 膨大な訴訟コスト

BLJの連載第4回(2015年3月号)は、「膨大な訴訟コスト」でした。

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年 3月号 [雑誌]

BUSINESS LAW JOURNAL (ビジネスロー・ジャーナル) 2015年 3月号 [雑誌]

ところで、この一色弁護士のBLJ連載記事について、色々示唆されたところがあり、自分でも整理しつつ書き付けておこうと思って数回の記事を書いてきました。

mainstage.senri4000.com

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が、その途中途中で分断されてしまったため、随分連載から時間が経ってしまいました。そんな中、先日発行された知財管理の2106年4月号に、PAEについての論説が掲載されています。現時点でのまとめとして網羅的かつ企業視点で書かれていて秀逸なので、知財管理にアクセスできる方には強くお勧めします。

という状況下、残念ながらこの分野は動きが激しいため、時間が経ちすぎて時宜を失ってしまいましたので(すみません)、この連載記事について書くシリーズは、今回で終了としたいと思います。私の業務が離れるわけではありませんので、また今後も何らかの形で書くかもしれませんが、いったん打ち止めにします。

さて、米国で訴訟コストが多額にかかることはよく知られています。その中でも突出して高いのが独禁法関係の訴訟と特許訴訟と言われています。これらがなぜさらに高額になるのかといえば、ディスカバリーが膨大だからということですね。独禁法関係については良く知りませんが、特許訴訟を行う弁護士は専門性が高いためにチャージが高いという事情もありそうです。

ディスカバリーというもの

ディスカバリー(証拠開示手続)は、英米法特有の手続です。発祥の地の英国にもあるようですが、米国に渡ってから独自の発展を遂げたようで、ずいぶん異なるものになっているようです。BLJ記事の記載を引用すると、

ディスカバリーとは、トライアル前に当事者が相手方や第三者から情報収集を行う手続全般を指す。

とのことで、Black's Law Dictionary 9th edition では、

Compulsory disclosure, at a party's request, of information that relates to the litigation.

なのですが、どんな「情報」なのかと言えば、争点に関するあらゆる文書やデータで、少しでも関連性が疑われると開示しなくてはならず、特許や被疑製品に関する技術情報はもとより販売やマーケティングに関する情報、社内外のコミュニケーション、会議の資料など、非常に広範囲です。

もともとディスカバリーは、当事者の武器を揃えるというか、公平を期すために、証拠となりうるものを共有し、不意打ちにならないようにするという発想から来ているようです。その昔は不意打ちが訴訟戦略として利用されていたという歴史的経緯があり、連邦民事訴訟規則 (Federal Rules of Civil Procedure: FRCP) の制定の際にディスカバリーが導入されたということのようです。

こうした全体感は、こちらの書籍が参考になります。

米国ディスカバリの法と実務

米国ディスカバリの法と実務

ざっくり言えば、当事者間に情報の非対称があれば、持っていない側は不利になるし、不意打ちも呼びやすい。それはフェアではないから裁判をする前にその不公平を均しておく、そのためには、当事者間で関連情報は自主的に開示させよう、と理解しておくといいでしょう。そして、それを守らないのは裁判所に対する侮辱になる、という建て付けとなっており、強制力が効く形になっています。

関連情報がすべて開示されていれば、その中から証拠となるものを選び出せばよいので、あらかじめ選んで出させるよりもよいだろうということなのかな、と思います。

こうした趣旨はよいのですが、関連情報が膨大になってくると、その負荷が得られるメリットより過大になります。膨大になりすぎては肝心の役に立つ証拠を発見すること自体難しくなりますし、手続きのための手続きになってしまい、目的が達成されない嫌いも出てきます。今の特許訴訟におけるディスカバリーはそうした状況にある、という認識だと思います。

「ディスカバリーは極めて非効率な手続」

ディスカバリーは、そもそも裁判の中で使われる証拠を探すために行われるわけですが、その割合が非常に低いことがコラム(本号のP114)で紹介されています。中でも特許訴訟はその傾向が顕著で、なんと開示された文書のうち証拠として採用されたのは1万分の1に満たないとのことです。負荷の割に得られるものが少な過ぎますね。

連邦民事訴訟規則改正

こうした状況を改善するために、連邦民事訴訟規則の改正が昨年末に成立しています。雑誌の連載当時は法案の状態で紹介されていましたが、ほぼそのまま通過したようです。大きな変化をもたらすものなのかな、と思って読んでいたのですが、あまり話題になっていないようです。現場としてこれまでと違いが見えているかというとまだ不明、これからになりそうです。

SCOTUS Approves Proposed FRCP Amendments - The Ediscovery Blog by Kroll Ontrack

The 2015 FRCP Amendments: 'Tis the Season - The Ediscovery Blog by Kroll Ontrack

abovethelaw.com

コストと便益

これらは、結局のところは、目的を達成するためにかかるコストと得られる便益の比較衡量になります。知的財産戦略本部で行われている「検証・評価・企画委員会 (知的財産推進計画2016策定に向けた検討)」の中に、「知財紛争処理システム検討委員会」がありますが、その第1回議事録中の渡部俊也先生の発言にそのような趣旨のものがありましたので、少しだけ引用しておきます。

特許制度、特許システムから受ける経済的便益と、それから、訴訟等、いろんなコストがどうしても必要になります。そのコストとの差が、随分業界によっても違う し、変動もしてきている

問題は、どっちかを大きくすることではなくて、その差がないとインセンティブにならない。すなわちイノベーション促進のためのインセンティブにならないということなのです。

結局は、人はそのように行動する、特に、個人と異なって企業は経済合理性で動くことが多いので、さらにその傾向が強まるということだと思います。制度的にあちこちに綻びや歪みが出ているのですが、その手当が思わぬ影響をもたらし、また揺り戻しがあるのが通常ではないかと思います。

発明の本質から事件の見立てをする

昨秋出版されて気になりつつなかなか書店に行けなくて購入が今になってしまったのですが、「訴訟の技能」を読みました。

訴訟の技能――会社訴訟・知財訴訟の現場から

訴訟の技能――会社訴訟・知財訴訟の現場から

第1章の座談会の中で、事件の見立てについて話されているところがあるのですが、その中で、末吉弁護士が、知財事件において最も重要なことは発明の本質であるという趣旨の発言をされていて、ああやっぱりそうなのだ、と勝手に意を強くしましたので、少し長くなりますが引用させて頂きます。

このくだりは、中村直人弁護士の企業間訴訟についての発言を受けたものなので、まず、中村直人先生の発言の引用を。(強調は当方による)

一方で難しい事件、大事件の場合には、要件事実から入ってしまうと事件が明後日の方へ行ってしまうことが多い。難しい事件の場合には資料をとことん読み込む。資料をとことん読み込んで、お客さんの言い分を聞くのです。「なんで向こうはひどいやつだと思うの?」とか、「なんで僕らは正しいと思うの?」と。こちらが正義だと想う理由とか、向こうがひどいと想う理由とか、そういうスジみたいなものを考えて、私どもの正当性の根源はどこにあるのだろうというのを考えるのです。それは法律的な意味合いではなくて、「人間としてこれはひどかったよね」とか、「こういうのは向こうが嘘ついたよね」とか、何でもいいのですが、そういう法律以前のレベルで、「あっ、これはやっぱりこっちに正義があるよね」と思えるような根拠。それをつかんでから、そこから法律論を立て始めて、そうすると今度は法律解釈論で、これはどのような法律構成にすればいいのだとか、これは判例はあるのかとか、学説はあるのとか、そういうことになってきて。こう言ったら向こうは何と反論するだろうということを考えて、この点は証拠がある、この点は証拠がないと言うことを考えて、それでようやくストーリーが見えると、これは勝っているとか、これは難しいとか、これは法律解釈次第だから、どっちに転ぶか分からないとか、そういうのが見えてくるという感じだと思いますね。

これを受けた末吉先生の発言が以下の部分です。

・・・特許事件というのは、大きな事件も小さな事件も、みんな難しいと言うか、よくわからないというのが本当のところではないかと思います。まず、要件事実論というのがあるような、ないような。・・・また、動かしがたい事実はほとんどない。明細書にこう書いてあるとか、審査経過はこうであるとか、それぐらいが確実で、そこから先は1つひとつ分析・解釈を積み上げていくのです。そういう中で、訴訟の見込みというのは、ある意味で愚直に立てていくのですが、今の中村先生からご指摘があった企業間訴訟の場合の正当性に匹敵するもの、アナロジーは、特許の場合は発明の本質なのです

とくに特許権者の側の場合はそうですが、逆に侵害しているとされるほうもそうなのです。この発明は何がすごいのかと言うことを発明者の立場に立って、その発明の本質を見抜けたら、たぶんそんなに判断はぶれない。そんなにすごいならば有効でしょうし、そんなにすごいならば、もしかすると侵害になっている。そういう意味での発明の本質を見極めるというところが本当は究極の目的で、そのためにいろいろなものを読み込むし、技術を理解しようとする。

・・・いかに目標に向かっていくか、つまり発明の本質を見抜いた上で、それを裁判所に理解してもらう、そのための工夫がどれだけ上手にできるか。とくに太い柱を立てて、どう組み立てていくかというところが勝負です。

ここでは、発明の本質を見極めるために、「いろいろなものを読み込む」「技術を理解しようとする」と言われています。「技術を理解しようとする」方法としては、技術的知見に関するヒアリングの方法として、別のところで発言があり、本書の第2章第2節でも書かれています。座談会部分から引用します。

私は、ブラックボックス化だと思います。専門技術的な事項を同じ知的レベルでヒアリングすることはできません。ただ、細かいことまでは分からないが、細かいことをブラックボックスにした上で、インプットとアウトプットが噛み合ってくるところがある。たとえば、免疫反応。免疫反応は「鍵と鍵穴の反応」とよく説明されています。この「鍵と鍵穴の反応」のたとえは、一つのブラックボックス化です。この鍵と鍵穴の反応が、たとえば、抗原抗体反応です。これを基礎的な文献等で勉強する。これを基本として、問題となっている免疫反応を理解していくのです。

企業の知財担当者として発明の本質をつかむためにしていることについては、「技術思想としての発明を捉える」というエントリで以前取り上げました。これをいつも全部自分でするわけでもなくて、誰かが主担当としてやって、それをトレースする、それで正解かどうかを叩いて揉んでおく、という形で共有していきます。

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末吉先生がおっしゃるように、対象特許の発明の本質がしっかりつかめれば、ストーリーとしてはぶれないものになっていくと思います。ただ、訴訟においては、本質が理解できたとして、それをいかに裁判官に説明するかという難しさがあり、特許と一括りにしても、説明(理解)のしやすい系統のもの、しにくい系統のものはどうしてもあります。理解して貰うことに失敗するリスクも鑑みて、事件の見立ては行う必要があります。

BLJ「ライセンス契約法」連載への期待と要望

前回記事の通り、大変高評価している本連載ですが、せっかくですから私自身の問題意識の一端の覚えを兼ねて、今後への期待と要望を書いておきたいと思います。

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見通しが知りたい

まずは、この連載がどこまで何をカバーされる予定なのかの全貌が知りたいです。前回記事で書いたように、とても丁寧に整理されていて理解の助けとなり大変ありがたいのですが、反面、全ての論点を扱うには長い時間がかかりそうな気がします。

リファレンスとしての価値も高いと思いますので、ぜひ全体を、粒度を揃えて取り扱っていただきたいと期待しており、期待とともに待ちますので、粗い目次のようなものが提示されると嬉しいです。

ライセンスにおける一般条項の考え方を

これまでの連載でも、知的財産権法と民法の2つに分けて整理されており、知財屋にとっては民法側の丁寧な解説がとても有用です。今後の連載で読みたいと思っているのは、ライセンス対象や範囲を定めるコアの部分よりも、いわゆる一般条項でカバーされる契約条項の方です。これらをライセンス契約特有の事情に照らした場合にどのように理解しておけばよいのか、発動されたときにどうなるのかを考える補助線になるような解説を期待します。

具体的には、特に、契約当事者、契約約上の地位の譲渡、解除、終了後の残存条項、契約違反と損害賠償の考え方あたりを期待しています。特に、特許のライセンスであって、その対象が特定の特許権ではなく包括的なものであったり、グラントバック条項が付いていたりする場合には、契約の建て付けをきちんと考えておく必要があると思っていますが、実務的にはどうも流している気がします。いくつか思いつくものについて、詳細を以下述べておきます。

契約当事者

契約当事者にグループ会社がある場合、グループ会社をどこまで契約のカバー範囲にいれるべきでしょうか。ライセンシーとして、ライセンサーから提供される雛形の契約書では、当事者としてはグループ企業のトップの会社を想定している場合もありますし、単独会社を想定している場合もあるようです。一番多いのは、実施する会社を当事者として、ライセンスのカバー範囲に子会社までを含める形でしょうか。広くする場合は、カバー範囲を関連会社として、関連会社の定義を親会社(controlled by)・子会社(controls)・親会社を共通にするグループ会社(under common control)とします。海外ではunder common controlも割によく見かける気がします。

昨今は企業再編が多く、企業グループによっては、ライセンス権限を与えられた専門の子会社が契約当事者になってくることもあります。また、契約の当事者と支払の当事者が異なる場合も珍しくありません。当事者は事業会社で、ライセンス収入の管理は管理子会社が行っていることもあります。なお、海外の企業との間でのライセンス契約の場合、契約当事者と支払先(請求書の発行元)が異なると、租税条約の届出書との関係で税務署と一悶着あったりしますので要注意です。こうした役割ごとに法人が異なる場合は、細かく注意を払って契約書に盛り込む必要があります。

企業再編も頻繁にあります。実際にライセンス対象の実施を行う会社が企業グループの1子会社であった場合、その子会社ごと企業グループの外に売却されてしまうかもしれません。これを嫌って、契約の当事者として、企業グループのトップの会社であることを要求されることもあります。しかし、グループトップの親会社は事業会社でない持ち株会社であったり、管理機能だけを持つ会社であることもありますので、ライセンス契約の当事者としてなじまなかったり、社内の承認権限との関係でライセンシー側としてはあまりありがたくないこともあります。

このような、契約当事者周りの整理ができるとありがたいです。

契約上の地位の譲渡

M&Aが珍しくない昨今です。ライセンス契約は、通常譲渡禁止条項を置いていると思いますが、事業譲渡されたり吸収合併されたりして相手方の会社がなくなってしまうこともよくあります。知らないうちに相手が変わっていたのではまずい場合もあるでしょうから、通知や承諾義務を置いたりしているのではと思います。どのような場合を想定してどこまで定めておくのがよいでしょうか。

関連して、 Change of Control条項(当事者が特定の第三者の配下に置かれた場合には契約が終了する)が置かれることがあります。事業会社間のライセンス契約だと、相手方が競合に買収されたような場合に解除できるようにしておきたいこともあるのでしょうか。

これらは、上述した契約当事者をどのように設定するのかとも絡んで来ると思いますが、事業譲渡や契約上の地位の譲渡という観点から、どういう場合にどのような条項が有用で、どういう場合には置いても大して意味がないのか、考え方を整理しておきたいです。

解除条項

解除条項は、あまり深く考えずに提案されたものを飲んでいることが多くあります。ライセンス契約の本旨を押えた上で、契約関係がうまく行かなくなるときをどのように想定しておけば良いのか、そうした場合に契約関係から離脱する(=解除する)のはどのような意義があるのか、といった整理が欲しいです。

契約違反を理由とする解除

よくある解除事由として、契約違反+催告後も治癒しない場合、さらに、それが重大な場合は解除し、加えて損害賠償請求できる、というのがあります。

単純な特許ライセンス(ノウハウなどが付属しない)だと、ライセンサー側に特に契約上の義務はなく(権利不行使くらい)、ライセンシーの義務は対価の支払に尽きます。

対価の支払も、固定額一括払いのみだったりすると、その1回で義務は終わりです。支払遅延とか、契約したのに支払わないとかのトンデモケースをどこまで想定しておくかというのはあるにしても、単純にお金の話です。一括払が分割払いになったり、年額固定の実施料になったとしても、やっぱり払うか払わないか、期限を守って払うか、だけの話です。このような契約でも上記のような解除条項が入っていると、いったい何を想定されているのだろうと疑問に思うのですが、これは想定されないから文言をこのように修正しましょう、とまで言い切れるほどの自信がなかったり、単純に一般条項で時間をかけるのが手間だったりしてそのまま放置することがよくあります。反論の基盤をつくる理論をいただけるとありがたいです。

監査条項との関係

固定額払いでない、ランニングロイヤリティ付きの特許ライセンスの場合には、正しく算定されているか、算定に従って支払われているかは重大な義務になります。最も揉めやすいところであり、悪意があれば誤魔化して報告することも可能な反面、煩雑で、ヒューマンエラーが起きやすい性質の処理でもあり、監査条項をどう作るかとも関係してきます。また、支払対象の製品の定義によっては、特許の実施の有無が関わってくることになり、さらに揉めやすくなります。蛇足ですが、支払対象の製品を対象特許を使ったものに限定したくなるのはライセンシー側としては山々なのですが、これをやると微妙な線で再び揉めることになるので、特許とは関係のない定義を置いてしまうことができればその方が全体としてみれば有用だと考えています。

このような、ランニングロイヤリティの支払を巡って問題が起こった場合には、ライセンサー側としては契約違反だと主張したいため、その前提として監査を実施させろとなることが多いでしょう。ライセンシーとしては、監査を行われると大抵の場合どこかにエラーが発覚しますし、意見の対立が出ることが想定されることに加え、そもそも通常業務に当てているリソースを監査のために相当量割り当てる必要があるため、あまり受けたくはありません。ということで、どういった場合に監査を認めるのか、そのやり方はどうあるべきか、監査の結果誤りが発覚した場合にはどうするのか、さらに、意見の対立が解消しなければどうなるのか、これらの究極的な解決として、解除権や損害賠償請求権との関係はどうなるのか、といった建て付けをしっかりしておく必要があります。なかなか想定ケースを詳細に分岐させて考えておくことが難しいので、このあたりもガイドが欲しいです。

解除条項の対等性

一方向のライセンス契約は、ライセンサー側の義務がほとんどないため、解除自由をライセンシーのみに限定して作られることがあります。上述したように、大して意味のない条項であれば、どちらでも構わないのですが、対等な形にしておく意義がある場合があれば押えておきたいです。

グラントバック条項との関係

特許の数が多い電機分野では、対等な包括クロスライセンスでなくても、ライセンシーの対価の額を減らす道具として、また、ライセンサーの設計自由度の確保を目的に、広範なグラントバック条項が置かれることがよくあります。グラントバック対象特許の評価にもよるのですが、この条項を理由に解除条項を対等な形に持っていくことがあります。

グラントバック対象特許についても不争義務(後述)を付属させ、それに違反した場合を解除事由に加えておくと、対等な形でもあまり違和感がないように見えます。とはいえ、これは適切なのだろうか、と思うこともあります。

不争義務を伴うライセンス契約の場合

ライセンス対象特許について、不争義務(ライセンス対象特許について無効審判等を請求して有効性を争わない、有効性を争う他社を援助しない)が付属する場合には、この違反を解除事由に入れるのが通常です。この場合はライセンスを維持されたまま争われたのでは特許権者側に不利なため、まずは解除して権原ない状態に追い込んでおく必要があります。これについては割とすっきり理解ができると思います。

一方、グラントバック条項をつけた場合には、ライセンシーとしては同様の不争義務を対等性の観点から付すことがあります。そして、ライセンサーがグラントバック対象特許についてこうした行為を行った場合には、以後の契約期間分は無償ライセンスを保持しつつ、契約は解除という作りにしたりします。これらは、いくつかの型が考えられると思いますので、整理していただけるとありがたいです。

倒産などの解除事由

解除事由では、会社が傾いたとき(破産や債務超過など)も入っていることが多いですが、この意義はどうでしょうか。ライセンシーとしては、ライセンサーが傾こうが潰れようがライセンスは生き残って貰う必要があります。このあたりは倒産法制度との関係があり、紆余曲折を経て当然対抗に落ち着いたことは連載でも詳細に解説頂きました。これを前提にしつつ、解除条項はどう立てておくのがよいのか、という観点になるかと思います。

ライセンシーが倒産するような事態に陥った場合でも、ライセンサーには元々大した義務があるわけではないため、ここに解除権が要るのだろうか、とはよく思います。解除して、損害賠償請求に切り替える方がよい場面が想定されるのか?とも思うのですが、よく分かりません。

残存条項

解除条項を設けた場合には、同時に解除後も残存する義務を特定しておく必要があります。典型的には秘密保持条項だと思いますが、契約によっては殆どの条項が残存条項に入れられていたりして、解除の意味はどこにあるのだろうと疑問を持つこともあります。ライセンス契約において解除後も残存させるべき条項とその理由について整理していただけるとありがたいです。

知財部門の定期購読雑誌

昨年末にはっしーさんの「法務部のための定期購読誌&データベースガイド」エントリを拝見して、そういえば、定期購読している雑誌についてまとめてエントリしたことってなかったかも?と思いましたので、一度まとめておこうと思います。データベースについては、また機会を改めてご紹介することにして、雑誌の過去記事収録という観点でのみ最後に掲げています。

blog.livedoor.jp

知財系雑誌

知財管理

日本知的財産協会(JIPA)の機関誌です。会員になると、1社あたり2部が無償配布されます。日本知的財産協会は、正会員と賛助会員の種別があり、正会員は、営利を目的とする民間の日本法人で、事業のための知的財産を創出し、その保護と活用を図っているものとされています。さらに知的財産を所管する部署を有し、知的財産の専任者を置いているという要件もありますので、知財部門を置いている企業の集まりと言えるでしょう。

知財管理誌は、JIPAの専門委員会の研究成果の発表媒体であり、知財関係の論文の掲載媒体です。「会員相互の研鑽・交流情報誌としての役割を持つとともに、専門性の高い論文や企業における最新の知的財産活動を掲載する知的財産関係の専門誌としても高く評価され、知財の実務家や専門家にとってなくてはならない雑誌」と謳われています。

基本的には、知財管理誌に発表後1ヶ月経過すると会員用HPにPDF掲載されます。会員であれば、専用のHPから、目次や検索で記事全文に当たることができます。専門委員会の研究開始の際には、まずはここから先行文献を当たります。

発明

発明推進協会の月刊誌です。発明協会及び発明推進協会の会員の機関誌ですが、一般書店でも販売しています。知的財産権制度の普及、知的財産権の利用促進という発明推進協会の目的からか、比較的中小企業向けの記事が多く、柔らかい印象です。

パテント

日本弁理士会の会誌(月刊誌)です。弁理士登録をしていると、毎月弁理士会から送られてきます。とはいえ、「知的財産の最新トピックスや研究成果などを広く発信していく雑誌」と謳われており、定期購読は誰でも可能で、バックナンバーも購入できます。また、2002年以降の記事は多くがPDF公開されており、パテント誌発行月の2ヵ月後の月初め頃に掲載されます。検索システムも提供されていますが、普通にWEB検索をしていても記事がヒットすることも多くあります。

執筆者は公募されており、弁理士に限りませんが、弁理士会の委員会の研究発表の場にはなっています。毎月特集が組まれ、テーマに応じた原稿が集められて掲載されます。

とっきょ

特許庁の広報誌です。無料で配布されており、電子版もあります。いまやAndroid版もあるようですね。特許庁の動きはホームページでも追えますが、分かりやすくタイムリーに解説記事が載りますので、流れを追うには良いと思います。

特技懇誌

特許庁技術懇話会が年に数回発行する会誌とのことです。バックナンバーはPDF公開されています。特許庁技術懇話会は、特許庁の技術系の方々の集まりということですが、特許庁の中の方ならではの記事があって参考になります。

知財ぷりずむ

経済産業調査会が提供する知的財産情報会員の会報誌(月刊)です。

『「知財ぷりずむ」は、実務に精通した裁判官、弁護士、弁理士、研究者等の執筆陣による研究論考・判例研究を主要記事とし、わが国知的財産国家戦略や海外の制度事情、新たな技術動向、そして条約・法令・注目判例の解説を行うとともに、参考資料として、全省庁にまたがる知的財産資料を収録しており、これからの知的財産戦略の立案に際して、有益な判断材料を提供する』と謳われています。

バックナンバーの目次は公開されていますが、本文のPDF公開はされていません。

特許ニュース(日刊)

『昭和36年の創刊以来知的財産界唯一の日刊紙』とのことです。誌面の雰囲気は私がこの業界に入った30年近く前から変わっていません。WEB情報がなかった頃は、各国の法制度情報や法改正情報をいち早く提供するソースとしてよく読まれていました。判例解説や論文も掲載されており、変わらず定期購読されている会社も多いと思います。

こちらもバックナンバーの目次は公開されていますが、本文のPDF公開はされていません。日刊紙なので油断するとあっという間にバックナンバーが溜まってしまうのが難点かも。

知財ぷりずむは、すべての知的財産情報会員に送付されますが、知的財産情報普通会員や知的財産情報特別会員になると、さらに「特許ニュース」が送付されるようです。

Law & Technology

「知的財産・バイオ・環境・情報・科学技術と法を結ぶ専門情報誌」ということで、知財に限られませんが、8~9割方知財系の記事で構成されています。他誌に比べ、特許庁などの行政サイドの執筆者が比較的多いように思います。

定期購読すると、編集部特設サイトから紙面のPDFがダウンロードできるIDとパスワードが提供されます。

月刊コピライト

公益社団法人著作権情報センターの会員向けに発行されている著作権の専門情報誌です。非売品で、会員にならないと入手できません。

知財研フォーラム

一般財団法人知的財産研究所が発行する季刊誌です。知的財産研究所は、知的財産に関する国際的・総合的な研究並びに世界の知的財産研究機関や研究者に対する研究協力を目的として、1989年6月に設立されたということです。毎回特集が組まれており、集中してそのテーマについての論考を読むことができます。

知財系の記事が掲載される法律系雑誌

知的財産法は法律の一分野ですから、法律系雑誌にも時々知財系の記事が載ります。毎号載る法律系雑誌は珍しいため、知財部門で定期購読するかどうかは微妙です。知財法務業務が相当量ある場合には、できれば購読したいところですが、法務部門との距離が近ければ、関係する記事だけ回覧して貰ってもよいかもしれません。知財記事の掲載頻度がそれなりに高い代表的な法律実務系雑誌としては、以下のようなものがあります。

Business Law Journal

数か月に1度の頻度で知財系の特集が組まれるイメージのBLJ。特集でなくても連載や個別記事で1ヶ月に1記事くらいは知財系のものが掲載されている感じでしょうか。法務の方々にお役立ち度No.1と評されるだけあって、知財系の記事であってもそこは変わりません。どちらかといえば、特許系よりも商標・意匠・不正競争防止法絡みやさらに周辺法との関わりにフォーカスしたもの、特許系であれば訴訟係争寄り、知財法務よりのものに強みのある記事が多いように思います。

定期購読者は過去記事の検索ができ、PDFでダウンロードして纏めて読めるのはとてもありがたいです。

惜しいのは、知財部門で購読するには掲載頻度が低すぎるのと、本流記事が少ないために購読一押しとは言い難いところで(書籍予算も限られているところですから)、知財クラスタの中での知名度はそれほど高くありません。

ビジネス法務

こちらも、旬なテーマがあれば知財系の記事も掲載されます。特に中小規模やメーカー以外では知財部がなく、法務部や法務担当者が知財までカバーしますから、それを念頭に置かれた記事が多い気がしています。知財部として押さえておく必要まではないかな。隣に法務がいれば、チェックのために回してもらうのが良いでしょう。

NBL

実務に直接役立つ情報というよりも、法律に関する掘り下げた記事や座談会の書き起こし記事が多く掲載されています。硬い記事が多いため、読み応えがあり、回覧がスタックしがちな雑誌の一つのように思います。こちらも知財系の記事が毎号載るほどではなく、数ヶ月に1度(ただし数回連続の記事も多い)の掲載ですが、本誌は基本的に定期購読のみの販売であるため、読みたい場合は購読するしかありません。

過去記事のデータベースがあり、さらに、データベースはWestLaw Japanからも契約が可能となっています。データベース契約で過去記事検索とPDFの印刷が可能(但しダウンロードして持ち出すことはできません。データベース上での閲覧のみ)。データベース契約すると本誌が1冊付属で送られてきます。発売の際にはざっと目を通しておき、必要に応じて過去記事を検索するのが良いと思います。

国際商事法務

はっしーさんの上記エントリでは「日本語ですばやく読める外国法文献として貴重」とされています。マイナーな国の法律動向も含めて日本語で追うことができる雑誌です。国際法務の割合がそれなりにあって、さらに知財系を掛け算すると、この雑誌まで取る必要がある知財部門はあまり多くなさそうです。しかし、この雑誌も定期購読していないと入手が難しいのでとりあえず購読しておきたい方に傾くことも。購読を止めたがる法務を説得して取って貰っている現状・・。

目次のPDFは公開されていますが、本文の公開はされていないようです。

ジュリスト

少し前に大幅に模様替えして、理論系から実務寄りにシフトされ、縦書きから横書きになってびっくりしました。ジュリストでも時々知財系の特集がありますが、定期購読するほど多くはありませんので、目次をチェックしたり、ブログでの言及から読みに行ったりする程度で足りるイメージです。こちらは一般書店で普通に手に入りますので、読みたくなってから買いに行っても間に合います。

ちなみに、雑誌の定期購読あっせんサイトであるFujisan.co.jpでは、雑誌の目次だけをメール配信してくれるサービスがあります。こちらを頼んでおいて、目次だけ忘れずにチェックし、興味がある記事があれば買いに走るというのもよさそうです。

知的財産研究所 図書館

知的財産研究所は、その設立趣旨から、知的財産に関する資料を幅広く収集している図書館を持っています。知的財産権法分野を中心に国内外の図書(報告書含め)約1万冊、雑誌約70種を所蔵されています。これは、WEBから蔵書検索ができる上、所蔵雑誌の一覧も公開されています。上記の他にも、知財に関する雑誌は網羅されていると思います。また、粗い文献調査をする際には蔵書検索を使えて大変ありがたいです。

WestLaw Japan

知財系の判決はほぼ全件が裁判所のデータベースで公開されます。裁判例を見たいときにはこれで足りるとも言えるのですが、PDFでなくワード形式で判決文をダウンロードしたいとか、クロスリファレンスを見たいとか、類似の判決を簡単に出したいとか、少し便利な使い方をしたいのであれば、判例検索のデータベースを契約することになります。

はっしーさんの挙げられている「判例秘書」、「LEX/DB」、「Lexis AS ONE」、「WestLaw Japan」あたりが代表的なところでしょうか。当社では、WestLaw Japanを契約しています。米系の判例データベースもWestLawを契約している関係と、あとは、価格体系との兼ね合いで決めています。

基本的な判例検索機能に加え、書籍・雑誌を有料オプションで幾つか加える形となっています。法務部門と共同で使用しており、特許庁の審決、ジュリスト・論究ジュリスト、NBLを追加しています。

「ライセンス契約法」 松田俊治|BLJ連載

BLJ(Business Law Journal)の2015年3月号から松田俊治弁護士による「ライセンス契約法」の連載がされています。2016年2月号で12回まで継続され、次回4月号からは隔月連載になるそうです。この機会に過去記事を全部まとめて読んでみました。

サブタイトルが「取引実務と法的理論の橋渡し」とされ、第1回において本連載の狙いは『「実務的問題」と「法的理論」との積極的な架橋』謳われているように、幅広く実務の実情に触れつつ、丁寧に法的な構成が説明されています。とても綿密な記事なので、なかなか日々の業務に追われている中で読み流すわけにいかず(それでは頭に入ってこない)、正直なところ積読記事になっていたのですが、ライセンス契約を実務担当者として進めていく上で理論的なベースを与えてくれる良記事だと思います。綿密に書かれているだけに、しっかり読み込まないと理解するのは難しいかもしれませんが、それだけの価値があります。

契約書作成の究極的な目的

連載の第1回に、以下のような下りがあり、耳が痛く読みました。

契約書をドラフトし、交渉し、締結するという作業の究極的な目的は、取引の当事者間における権利・義務の関係を適切かつ明確に設計すること、そして、将来の解決を委ねる裁判所等の紛争解決機関に対して、当事者が当該問題についてどのような解決を契約締結時点に意図していたかを、明確に理解させる書面を作成することである。もちろん、相手方当事者と見解の相違が生じたとしても、裁判所等の紛争解決機関に解決を委ねる段階まで至ることは実際には稀かもしれない。しかし、当事者間における権利・義務の関係を適切かつ明確に設計しておくことによって、当事者間における理解の齟齬を生じにくくできれば、そもそも紛争の発生を予防できる。さらに、ひとたび紛争のおそれが生じたとしても、当該問題に対して、当事者の意図していた解決策どおりの救済を紛争解決機関が与える蓋然性が見込めれば、解決に向けた交渉に自信を持ち、強い態度で臨むことで、良い結果を得られる可能性を高めることができよう。したがって、実際に裁判に至るか否かにかかわらず、ライセンス契約のドラフト・交渉を通じて、当事者間における権利・義務を適切かつ明確に設計するという作業の重要性は少しも揺らぐものではない。

実務担当者としては、主な条件の厳しい交渉を経て大筋合意をしてから契約の文言に入っていますので、その妥結を壊したくないという意識が強く働きます。このため、契約文言に不備まで行かない程度の懸念点(多くは解釈の余地が大きい不明確な部分)がある場合にも、このケースが紛争になるリスクがどの程度かを見積もって、さほど高くないと判断すれば、ここで波風を立てて時間をかけたり先方を変に刺激してこじれるリスクを冒すよりもスピード優先で締結してしまおうとすることが多くあります。

とはいえ、そうして流したことが可能性は低くても紛争に発展したときには当事者の合意の内容を示す強力な証拠となってしまうわけで、どれだけ厳密に行うかは考慮するにしても、改めて上記のような視点を持って行うべきだと思いました。

これまでの連載内容

本連載の今までの内容は以下の通りです。連載全体でどのような項目をどの程度の深さでカバーされるのかは明らかにされていませんので、今後も楽しみに読みたいと思います。ざっとご紹介しつつ、軽く感想を書いておきます。

第1回 連載開始にあたって

ライセンス契約を巡る状況を導入として触れられつつ、本連載の狙いを以下のように述べられています。

  • ひな形の条項解説という形式ではなく、ライセンス契約に関する法律問題の総論的な解説をまずは試み、その後、ライセンス契約の実務をめぐるさまざまな個別の問題点を俯瞰的に見る。

  • 伝統的な法律理論に、知的財産をめぐるライセンス実務の特殊性を接合するという課題を意識する。

  • ライセンス取引実務の現場で担当者が直面する問題についてその背後にある法理論を紹介するというアプローチにより「実務的問題」と「法的理論」との積極的な架橋を心がける

第2回 ライセンス契約をめぐる法律関係(1)

実務の現場において「ライセンス契約」が多義的であることを前提としつつ、本連載における定義を以下のように設定されています。

ライセンシーが、知的財産を活用する行為を行うに際し、知的財産権法上の権利を有している者(ライセンサー)から当該権利の行使を受けない件減(不作為請求権を含む)付与を受けるための諸条件を定める契約

実務においては、大きく「誰かが創造(create)した無形のものを憂いなく使うための取り決め」をライセンスとして取り扱っており、その対象は法律上の知的財産(権)であるとは限りません。ライセンサーとライセンシー間で取引対象となりうると合意されれば成立しますし、それが当該分野の商慣習となっているものもあります。こうしたものは現行法制上の保護は受けられないため、本連載の定義からは外れます。多少残念ではありますが、まずは外延の明確なものから見ていき、応用編は後で考えるのがよいのでしょう。

また、ライセンス契約の法律関係を整理する上では、(A)ライセンス取引の対象である知的財産について規律する知的財産権法に関する法律関係と、(B)民法(債権法)上の契約自由の原則の下で締結されたライセンス契約に基づき、契約当事者間の債権債務関係を生み出し、これを規律する法律関係とを区別するアプローチを提唱されています。確かに、考えているうちにこの両者を混乱してしまうことはやりがちなので、常に意識しておくことは有効そうです。

第3回 ライセンス契約をめぐる法律関係(2)

第2回で提唱された(A)(B)峻別アプローチに従って、(B)民法(債権法)上の法律関係について詳述されています。知財担当としては、(A)は専門領域であり強いものの(B)については弱い場合が多いので、丁寧な説明がとてもありがたいです。

第4回 ライセンシーの権利とその保護(1)―その脆弱性と対抗力

ライセンサー倒産時のライセンシーの保護は、長年の特許実務界の悲願でした。その昔の三田工業の倒産で、包括ライセンスを受けていた某社に大きな影響があったことをきっかけに問題提起がなされ、種々働きかけをしてきた経緯があります。この回では、こうした歴史を全体として振り返り、現在の状況までが説明されています。

第5回 ライセンシーの権利とその保護(2)―残されている問題

前回のライセンシー保護についての記事は特許の話でした。そこで、その他の知的財産権についてはどうなっているのかという説明がこの回です。

あまりこれまで意識してこなかったのですが、著作権にはライセンシーの対抗制度そのものが存在しないのですね。コンテンツのライセンスは広く行われているだけに、必要性は高いのではないかと思われ、手当てをする声が上がっていなさそうなのが意外でした。

ちなみに、知的財産制度のユーザーとしては、日本知的財産協会(JIPA)が大きく、産業界の声として意見を出すことも多く行っています。ただ、伝統的な知財部門の集まりという側面が強く、産業財産権に偏っている嫌いがあります。著作権のユーザーは業種としても全く違う企業が多く、知的財産協会の活動ではあまり広くカバーされていないように思います。今後は変わってくるのかもしれませんが。

第6回 ライセンシーの権利とその保護(3)―ライセンサー倒産問題、再び

さらに発展して、近時のライセンサー倒産(民事再生)の裁判例を取り上げて現状を説明されています。具体的な事案があると、問題点がはっきりしますので、契約時の注意点も分かりやすくなりますね。

第7回 知的財産権の譲渡契約とライセンス契約

特許実務の現場にいると、譲渡契約とライセンス契約を選択的に考えるなどという局面に遭遇することはまずありません。通常、ライセンシーとしては利用権原が欲しいだけですし、いまではライセンサー倒産時にもほぼ安心していられるようになっていますから、あえて対価が大きく上がるだろう譲渡を視野に入れる必要がないのです。

という感覚でいたため、譲渡とライセンスを比較検討のまな板に載せると言うのは理論上の話という理解でいたのですが、著作権の実務では大きく事情が異なるようです。驚きました。

ちなみに、ライセンスと一括りにされますが、特許と著作権の両者を同程度の割合で取り扱う企業実務家は非常に少ないと思われます。所属する企業の業種や事業内容によってどちらかに偏ることが多いのでは。そういう意味で、本連載は両者に目配りされていて気付きが多いです。

第8回 知的財産権の譲渡契約とライセンス契約(2) ―著作権法と特許法の違いを念頭に

前回が著作権の話だったので、今回は特許の話です。今回は、正直理論的な話に寄っていると思います。あまり大企業間では専用実施権や独占的実施権には縁がありませんが、大学や中小ベンチャーの取引では時にこうした状況があるようで、裁判例では見かけます。

第9回 ライセンス契約の成立、ライセンシーの権利の効力発生

契約成立についての諸々です。シュリンクラップ・クリックオン契約、約款、書面化されない契約慣行など。ここでも、特許と著作権では違いが見られます。

第10回 ライセンス契約に関する錯誤

民法の意思表示についての復習をしつつ、ライセンス契約にあてはめるとどうなるか、という話でした。典型的には、(ア)特許発明の技術的範囲に関する錯誤、(イ)特許の有効性に関する錯誤ということらしく、なるほど、これらは錯誤という観点で整理できるのか、と。論点としては古くから議論されていますので認識していますが、錯誤の問題と考えたことはなかったのです。争いになりえますから、契約上で手当てすべき事項と思います。

第11回 ライセンス契約の相手方の権原に関する瑕疵など(1)

特定の特許についてライセンスを受ける場合には、登録原簿で正しく権利者かどうかを確認するのが実務的には必須です。ところがこうした登録制度が整備されているわけではない著作権については色々問題が起きうるということが紹介された裁判例でよくわかりました。

第12回 ライセンス契約の相手方の権原に関する瑕疵など(2)

会社間で契約を締結する場合に全ての署名者が会社の代表者というわけではありません。ライセンス契約でも、一律に代表者署名ではなく、社内規程により署名者が定められている場合が多いでしょう。その権限規程は外部から知り得ないため、どのように考えればよいのか、という話です。

標準必須特許の権利行使を巡る法的問題|鈴木將文 (名古屋大)

経済産業研究所の2015年ディスカッションペーパーとして、鈴木將文先生(名古屋大学)の論文が発表されています。個人的に関心の高いテーマであるため、アウトライナーにコピーして真剣に読みました。ご紹介するとともに、思ったことを書き付けておこうと思います。

www.rieti.go.jp

紹介

概要は、上記のページに掲載されている通りですが、論文の目的としては、以下のように書かれています。

本論文は、標準必須特許(注:FRAND 宣言がなされた標準必須特許)の権利行使を巡る法的諸問題に関し、我が国の裁判例等の特徴や残された問題点を中心として、主要諸外国における動向も踏まえつつ、検討することを目的とする。

そして、論文の構成としては、テーマに関連する諸制度の整理と法的課題の概観、諸外国の裁判例等の整理、それを踏まえた知的財産高等裁判所の判決等(アップル・サムスン判決・決定)の分析、競争法の関係の最近の動向の紹介(補論)となっています。ボリュームとしては全40頁です。(「II. 標準と特許を巡る法的課題の概観」が9頁、「III. 主要国・地域の裁判例等の動向」が5頁、「IV. 我が国の裁判例の分析と残された課題」が17頁、「V. 補論-競争法関係の最近の動き」が8頁)

標準と特許を巡る動きはここ数年非常にホットになっており、裁判例も次々に出されていますし、論文も多く出されています。個人的にも関心の高い分野なので、できるだけ目を通すようにしていますが、なかなか全部を検討するのは難しく、また、個々の裁判例や論文の位置づけが全体のどこに当たるのかといったことまで個別に読んでいる時には考えが及ばないのが常です。そんな中、この論文では、アップル・サムスンの判例分析を行う前提として他国の裁判例や論文も整理されており、現時点(2015年11月末)での総合的な理解を助けてもらえるものになっています。関心のある向きには一読をお勧めします。

交渉の手段としての権利行使と防御

標準に組み込まれた特許、特に標準化のプロセスに参加している特許権者が標準に必須である旨の宣言をなしている特許は、通常の特許のように他人を排除するという機能が期待されません。特許権者は、逆に特許発明が広く利用されることを期待して標準の策定に関与しています。

このような利用者を排除しない文脈においては、特許の差止請求権は、特許権者と利用者=被疑侵害者の間で行われる交渉において特許権者側の最も強力な手段として機能します。

損害賠償請求は所詮はお金で片が付く話ですが、差止請求が認められると市場にある製品を引き上げることになり、影響は大きく、場合によってはその分野への再参入が非常に困難になるかもしれません。交渉が決裂し、訴訟に持ち込まれた場合に差止めが認められるかもしれないというリスクは、被疑侵害者にとって最も回避したいものです。このバックアップがあるからこそ、特許権者が出すライセンス条件を検討しようという気になると言ってもよいでしょう。

本論文においても、「特許権侵害に対する民事救済措置に係る一般的な議論に対する、本判決等の含意」として、以下のように述べられています(強調は筆者)。

本判決等が、当事者間の交渉への影響に照らして差止請求権を制限した趣旨を一般化して理解すると、差止請求権とは、特許権者以外の第三者による特許発明の実施を排除すること自体を目的とする制度というよりも、権利者と第三者間の交渉を合理的な結果に導くために権利者側に与えられた手段であり、もしも交渉の合理的進展を阻害する恐れがある場合には、差止請求権の行使は否定されるべきである、という考え方が背景にあるといえる。さらに敷衍すれば、特許権侵害に対する民事救済措置については、特許発明の価値を最大限実現し、それによる利益を権利者に還元するという観点から制度の設計及び運用をすることが望ましく、例えば、特許権者よりも一層効率的に特許発明を実施できる者がいれば、その者に実施させ、利益を特許権者に分配させることが社会全体の効用を一層高めるであろうから、そのような結果が当事者間の交渉を通じてもたらされるように、差止請求権の行使を認め、あるいは制限することが合理的といえる。本判決等は、差止請求権の意義をこのように機能的に捉えることに対して、少なくとも端緒となる考え方を示していると解することができ、近年我が国で議論されている差止請求権の制限の可否について、大きな示唆を与えるものと考える。

では、被疑侵害者側の交渉の手段は何でしょうか?通常、特許発明の技術的範囲への属否(被侵害)や特許無効についての主張になろうかと思います。この主張によって、特許権者の請求に理由がないことを申し立て、差止請求を退け、損害賠償の支払を拒むことになります。

全面的に退けられないとしても、技術的範囲に属するとは言い切れないような弱い点がある、完全には無効にならないかもしれないが権利範囲を狭められる資料がある、といった主張ができれば、交渉上は上等で、ライセンス条件を利用者側に有利に寄せることができます。

willing licensee

本論文では、アップル・サムスン知財高裁判決等において、標準利用者が「FRAND 条件によるライセンス契約を締結する意思のある者」であることを、差止請求やFRAND ライセンス料を超える損害請求を否定するための要件としたことを、「willing licensee 要件」と呼んでいます。

そして、同判決等が、「FRAND宣言の付された標準必須特許に基づく差止めおよびFRANDライセンス料を超える損害賠償の請求を原則として否定した点で、国際的動向にも沿った妥当な判断を示した」と評価しつつ、残された課題として、「(1) willing licenseesの認定基準などの具体化、(2) 標準必須特許権が移転した場合の処理、(3) FRANDライセンス料の算定を含む適切な紛争解決手段の確立」を挙げています。この課題のうち、実務家として最も関心の高いのは「(1) willing licenseesの認定基準」です。

というのも、上記のように、特許権者と利用者の交渉の場で互いに使える手段と考えると、同判決等においてwilling licensee ではないことの認定は厳格に行うべしとされたことが、差止請求権を原則として否定されることとのバランス上から妥当なのかという疑問があり得るからです。

本論文でも、「標準利用者側は、特許権者との交渉において、必須宣言特許の必須性、侵害の成否(特許発明の技術的範囲への属否)、特許無効等についての主張をする自由を拘束されるべきではなく、そのような主張をしているからといって、直ちにwilling licensee ではないとすべきではない。」とされているのですが、利用者側にこのような交渉手段を残しつつ、特許権者側の最大の武器である差止請求権は認められないというのはどうなのだろう、というのが素朴な疑問です。

なお、標準必須特許について差止が原則認められないという判断については妥当だと考えています。willing licenseeの認定が「厳格」と言われたことで緩く判定されすぎるのではないか、それによって、特許権者側は武器を奪われた状態で交渉に臨まざるを得ず、利用者側に有利になりすぎるのではないか、と思うということです。

この点、本論文の補論で紹介されているEU司法裁判所判決(Huawei v. ZTE)では、このwilling licenseeの基準についてかなり具体的に書かれているようです(知財ぷりずむの紹介記事も参照。)。要約すると、以下のようになります。

まず、特許権者は、訴えの提起前に、被疑侵害者に対して、問題の特許の侵害の恐れ、及び侵害と考える事実を特定して警告する必要がある。そして、被疑侵害者がFRAND条件によるライセンス契約締結の意思を表示した後、標準必須特許権者の方から、書面により、ライセンス条件、特にライセンス料およびその算定根拠を提示しなければならない。被疑侵害者は、このライセンスオファーに対し商慣行に照らして誠実真摯な応答をしなければならない。被疑侵害者がオファーを受け入れない場合、直ちに文書によって具体的なFRAND条件を含む対案を示す必要がある。被疑侵害者の対案が拒絶された場合には、被疑侵害者は、それまでの標準必須特許の使用回数等に基づいて算定した金額を、銀行保証または担保に供する必要がある。

これによれば、被疑侵害者側も、ライセンスを受ける意思があります、と言っているだけではダメで、商慣行に照らして誠実真摯に応答し、対案を示す必要があるし、対案が拒絶されたら、担保の供託までしておかないといけないようです。「商慣行に照らして誠実真摯に応答」というのが具体的にどういうものが想定されているのか分かりませんが、単純に「高いから払えない」と言っているだけではダメなのかもしれません。その特許の価値とか属否や無効論に基づいた根拠のある主張である必要があるのかもしれません。

しかしながら、このような「willing licensee」に求められる義務は、アップル・サムスン知財高裁判決等から受ける印象とは多少隔たりがあります。通常の交渉において、提示されたライセンス料とかけ離れた対案を出した場合、「交渉する気がない」と受け取られても仕方がない場面もあると思いますが、わざわざ「厳格に行うべき」と言われていることもあって、特許権者のオファーを全く無視するようなことがなければよいのではないかとも受け取れます。

実際、この知財高裁判決の後に出されたイメーション株式会社とパテントプール団体のOne-Blue, LLCとの訴訟(東京地裁 平成27年2月18日判決)では、ライセンス料について両者に大きな隔たりがあったことが認定されつつも、判決は以下のように述べ、原告イメーションは「willing licensee」でなかったとは認定されていません。

原告ないし米イメーション社と被告との間には,妥当とする実施料について大きな意見の隔絶が存在する。

しかし,ライセンサーとライセンシーとなろうとする者とは本来的に利害が対立する立場にあることや,何がFRAND条件での実施料であるかについて一義的な基準が存するものではなく,個々の特許の標準規格への必須性や重要性等については様々な評価が可能であって,それによって妥当と解される実施料も変わり得ることからすれば,原告ないし米イメーション社の交渉態度も一定程度の合理性を有するものと評価できる。加えて,被告の交渉態度も,必ずしも原告ないし米イメーション社との間でのライセンス契約の締結を促進するものではなかったと評価できることからすると,両社間に大きな意見の隔絶が長期間にわたって存在したとしても,原告においてFRAND条件でのライセンス契約を締結する意思を有するとの認定が直ちに妨げられるものではない。

この判決を読んだときの率直な印象は、

「払わない」と言わなければよく、通常なら特許権者が怒るような料率でも対案として出しておけばいいのでは?

というものでした。その結果、特許権者が訴訟に持ち込んだとしても、交渉は継続していたと認定されるようにだけしておけば、差止請求は認められないし、FRAND条件を超える損害賠償請求は認められないのですから、被疑侵害者としては、訴訟前に頑張って交渉を妥結するインセンティブが薄いのでは。。。

というように、「willing licensee」の認定基準は、特許権者と標準利用者のバランスを考える上で、非常に重要なものだと思いますので、今後の積み重ねが待たれます。

現場へのフィードバックがどうかかるか

このような内外の裁判例の積み重ねは、裁判外での当事者交渉に大きな影響を与えます。差止請求権が制限され、損害賠償額もFRANDの範囲内とされ、かつ、ロイヤリルティ・スタッキングを考慮して上限が定められるとなると、特許権者は、従前に比べ、自身が「合理的」と考える料率よりも相当低い料率での交渉を余儀なくされると考えられます。

そうすると、そもそも、標準必須特許を「作る」インセンティブにもフィードバックがかかり、権利化の行動に変化が生じるのではないだろうか、というのが次なる疑問です。

またこれは、知財高裁判決が、「必須宣言特許に基づく損害賠償請求であっても、FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内にある限りにおいては、その行使を制限することは、発明への意欲を削ぎ、技術の標準化の促進を阻害する弊害を招」く、とし、本論文でも「特許権者にライセンス料収入を通じた利益を保障することも、優れた技術を標準に組み込むために必要である。」とされていることが、本当にそうなのだろうか?と思う、というところにも繋がります。

もともと、技術を持った者が標準化に参加するのは、必須特許により得られるライセンス料収入による利益を狙っているわけではなく、自分の技術を使った製品を標準を使って市場拡大するため=開発投資が無駄にならないようにしたいからで、製品の販売によって投資を回収することを予定していると思います。特許は開発成果の一部であって、開発投資の一部回収に役立つこともあるがあくまでおまけの位置づけではなかったでしょうか。それがあるとき必須特許からのライセンス料収入で大きな利益を得られたケースが出現したために、成功モデルとして踏襲されるようになっただけで、本来的なものではないのでは。

という仮説に立つと、FRANDのライセンス料が低く抑えられることで、必須特許を作る=自社の特許を組み込んだ標準策定に動く、という行動が減ってくるのではと思ったりするのですが、これは時間が経たないと分かりませんね。今後とも注視する必要がありそうです。