担当窓口の設定
事業会社からのオファーレターは、特許権者の知財部門の長の名前で発信されることが多いですが、末尾に担当者の名前と連絡先(電話とメールアドレス)が書かれていることが通常です。
レターの宛先は、社長であったり、知的財産部長だったりします。海外企業からの場合、社長宛に1通、General Counsel宛に1通を同送してくる、というパターンが多いでしょうか。日本の企業の場合、日本知的財産協会に加盟しているところが多いので、会員名簿を検索して、会員代表宛に送られてくることもあります。
特に、社長や役員宛にレターが来ており、面談を希望している旨が書かれていると、その先の連絡が続けて社長宛に入ってしまうことになりかねず、それを避けて窓口を明らかにするために、実際に面談日程の調整に入るかどうかは別として、先方担当宛にメールを入れておくことが多いです。
逆に、知財部門やGeneral Counsel宛のレターは、窓口設定の必要性が薄いので、とりあえずしばらく放置して様子を見ることもあります。複数社にレターを発信している場合、最初に反応のあった企業から攻める、ということもよく行われるため、みずからターゲットになりに行く行動は避けたい、という理由もあります。
とはいえ、日本企業から知財部門宛にレターが来ている場合、日本知的財産協会の名簿からこちらのダイヤルインの番号も分かっていることが多いため、しばらく放置していると電話で請求を受けることが多いです。こうなると、中々逃げづらいので、とりあえず、面談設定の調整に入ることになります。
どのくらい先の日程を設定するか
ここで、面談日程をどのくらい先にするのか、というのも考えどころです。被疑侵害者にとっては、面談を行うこと自体も、それを早く片付けることも、特に有益なところはないので、できればやりたくありません。先延ばししているうちに相手が諦めて引き下がってくれる(連絡してこなくなる)のが最もありがたいのです。
とはいえ、あまり先の日程を設定すると、
十分お時間がありましたから、調査・検討頂けましたよね?
となり、こちらの見解を面談中に求められる可能性があります。最初からそれではスピードアップしてしまい、結論を出すタイミングが早まってしまいます。初回には「まだ調査に着手したばかり(あるいは、準備中で着手もできていません)なので、今後調査・検討した上で、回答させて頂きます」としておきたいところです。
ここで、こうした特許の権利範囲に属するか否か(属否)についての調査検討には、最低1ヶ月の期間がかかる、というのが業界の常識というか相場観になっています。複雑なので特に長期間が必要、と理由付けして2ヶ月、というところでしょうか。全体感を検討する初動の段階、さらに詳細な検討を要する段階、と粒度の違いはありますが、どの段階でも「検討して回答を用意する」には1ヶ月、という目安があるようです。
このため、面談日程の調整は、1ヶ月を超えないで、ぎりぎり遅いところを狙います。通常は、3週間先の週のどこか、という形に持っていきます。先方の都合が悪いようであれば、翌週あるいは前週になります。
事前送付された資料の検討は?
前回のエントリで述べたように、通常、相対交渉の第一回は、特許権者からの説明セッションです。対象特許と被疑製品の関係を、クレームチャートに沿って特許権者が説明していきます。クレームチャートは、事前にメールなどで送られてくることもありますが、当日持参されその場でプレゼンの後、資料一式としてデータを送られることも多いです。
資料が当日になるのは、初回は説明だけで済ませる予定で、相手からの質問・反論は受けたくない、という場合もあるのでしょうが、単純に、面談当日を目指して資料を準備していて、ぎりぎりまで間に合わなかった、ということも多いようです。事前に送付される場合も、前日であったり、当日会議の1時間前だったりすることもあるくらいです。
事前に資料が送付されていたとしても、先に述べたように、十分な検討時間が取れているとは言えないため、
まだこちらの意見を述べることができるだけの検討ができておりません。
として、説明を拝聴するスタンスで臨めばよく、先方も、検討結果を強く求めてくることはありません。